【令和5年(2023年) 事例Ⅳ】第1問 経営比率分析 解説

事例Ⅳ

今回は令和5年(2023年)の第1問を取り上げ、どのような思考プロセスで解答に至るのかを具体的に解説します。(あくまでも、「私ならこのように解答する」という参考例として記載していますので、その旨ご承知おきください。)

問題の確認

令和5年(2023年)の問題はこちらに掲載されています。

問題文の確認

まずは、問題文から確認しましょう。(設問1)では令和3年度と令和4年度の比較で、悪化した」指標を「2つ改善した」指標を「1つ挙げ、さらに「D社」の指標を計算し、「小数点第3位を四捨五入」して答えることが求められています。また、(設問2)では、「悪化した指標のうち1つ」について「80字」で述べる必要があります。「D社全体の状況」をまとめる設問要求ではないので間違えないようにしましょう。

財務諸表(B/S、P/L)のチェック

事例企業の貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)を確認します。

  • 問われているのは「令和4年度」の数値なので、それを間違えないように○を書きます。
  • 当座資産に加えるべきものとして、「現金預金」「売上債権」のところに印をつけておきます。
  • B/Sの「流動資産」「固定資産」「流動負債」「固定負債」「純資産」の区切り線を引きます。
  • P/Lの各利益の下にアンダーラインを引きます。

以下はマークした状態の例です。

経営状態の傾向を把握

与件文を読む前に、まずは数値データからD社の経営状況の概観を掴み、仮説を立てます。この仮説が、後の与件文読解の「当たり」をつける精度を高めます。今回の問題は桁数が多いので全体像がつかみにくいと思います。このようなときは、上位桁のみで大まかな計算をするのが効果的です。

収益性: 売上高は約5,796百万円から約4,547百万円へ、売上総利益も約3,610百万円から、約2,804百万円へ、営業利益も約985百万円から、約527百万円へとともに減少しています。暗算では改善傾向か悪化傾向か判断がつきにくいところなので、ここだけ計算機で少し計算してみますが、売上高総利益率は62%→61%程度に、売上高営業利益率も17%→12%程度に減少しています。よって、収益性は悪化傾向にあるようです。

効率性: 前述の通り、売上高は減少傾向ですが、固定資産は微増、建物・工具等(有形固定資産)は微減なので、(有形)固定資産回転率は悪化傾向にあることは明らかです。一方、製品・原材料等(棚卸資産)も減少していますが、売上高の減少率と比較しないと、棚卸資産回転率が改善したか悪化したかの判断は難しいため、詳細な計算が必要です。

安全性: 流動比率や当座比率は一般に100%を超えると安全性の面で問題ないと考えられていますが、R3,4年度共に安全性の目安である100%を超えており、特にR4年度の方が増加しています。また、自己資本比率についても、改善傾向にあると判断できます。

この段階で、以下のような解答の方向性が見えてきます。

  • 悪化している指標: 「収益性」、「(固定資産の)効率性」に関する指標
  • 改善している指標: 「安全性」に関する指標

この段階ではどの指標を採用するかはまだ確定できないので、次のステップに進みます。

与件文

立てた仮説が正しいかを確認するため、与件文を読み込みます。以下がその概要です。

D社は創業20年の化粧品製造企業で、基礎化粧品・サプリメントの企画・開発・販売を行っています。競争激化やコスト上昇により販売が低迷し、売上減少が懸念される中、男性向けアンチエイジング製品の自社生産を伴う新規事業を検討中です。

解答案

設問1について

与件文の内容を踏まえ以下のように指標を選択します。

  (a) (b)
売上高営業利益率 11.59 (%)
固定資産回転率 23.04 (回)
自己資本比率 77.56 (%)

売上高営業利益率

  • 売上高営業利益率 = (営業利益527,037÷売上高4,547,908)×100 ≒ 11.59(%)
  • 選定理由:設問2も意識し、与件文の内容に原因となる記述が多いため収益性指標を選択します。また、差異が大きいため売上高総利益率よりも売上高営業利益率を選択します。

固定資産回転率

  • 固定資産回転率=売上高4,547,908 ÷ 固定資産197,354 ≒ 23.04(回)
  • 選定理由: 多面性を意識して効率性指標を選択します。設問2では詳細内容を記載する必要は無いため特に与件文を考慮する必要はなく、明らかに悪化している指標として固定資産回転率を選択します。

自己資本比率

  • 自己資本比率=(純資産2,307,233 ÷ 総資産2,974,899)×100 ≒ 77.56(%)
  • 選定理由: 多面性を意識して安全性指標を選択します。設問2では詳細内容を記載する必要は無いため特に与件文を考慮する必要はなく、明らかに改善している指標として自己資本比率を選択します。

設問2について

悪化している点とその原因を80字でまとめます。80字と長めの文字数なので、売上高減少と費用の高止まりについて、与件文の要素を抜き出して以下のように番号を付けて記述しました。

D社は売上高営業利益率が悪化した。原因は、①競合との競争激化による売上高減少、②輸送コストや原材料費上昇による売上原価高騰、③人件費など販管費の高止まりである。

以上となります。

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