中小企業診断士試験の事例Ⅰについて、過去6年間の出題傾向を分析し、各設問ごとにその傾向を以下のようにまとめました。各問題を「内部分析」「経営戦略(過去・将来)」「人事施策」「組織体制」などに分類してあります。
各年度の問題概要
| 年度 | 設問 | 概要 | 詳細内容 |
| 2019年度 | 1 | 戦経営戦略(過去) | A社長がトップに就任する以前に、自社製品のメンテナンス事業化に取り組んだが、ビジネスとして成功しなかった最大の理由。 |
| 2 | 内内部分析 | A社長を中心とした新経営陣が改革に取り組むことになった高コスト体質の要因である古い営業体質の背景にある企業風土。 | |
| 3 | 戦経営戦略(過去) | HPを立ち上げ、試験乾燥のサービスを展開することによって市場開拓に成功した要因。自社製品やサービスの宣伝効果などHPに期待する目的・機能とは異なる点に焦点を当てた成功の背景。 | |
| 4 | 人人事施策 | 新経営陣が事業領域を明確にした結果、古い営業体質を引きずっていたA社の営業社員が、新規事業の拡大に積極的に取り組むようになった要因。 | |
| 5 | 組組織体制 | A社長が経営コンサルタントの助言を熟考した上で、組織再編を見送ることとした最大の理由。 | |
| 2020年度 | 1-1 | 戦経営戦略(過去) | 老舗蔵元A社を買収する段階で、企業グループを経営する地元の有力実業家であるA社長の祖父が、どのような経営ビジョンを描いていたか。 |
| 1-2 | 組組織体制 | A社長の祖父がA社の買収にあたって、前の経営者と経営顧問契約を結んだり、ベテラン従業員を引き受けたりした理由。 | |
| 2 | その他(業務改善) | A社で情報システム化を進めた若い女性社員が、ベテラン事務員の仕事を引き継ぎ、情報システム化を進めた手順。 | |
| 3 | 人人事施策 | 現在、A社長の右腕である執行役員が、従来のルートセールスに加えて直販方式を取り入れ売上伸長に貢献した際に、部下の営業担当者に対して、どのような能力を伸ばすことを求めたか。 | |
| 4 | 人人事施策 | 将来、祖父の立ち上げた企業グループの総帥となるA社長が、グループ全体の人事制度を確立していくために、どのような点に留意すべきか。 | |
| 2021年度 | 1 | 戦経営戦略(過去) | 2代目経営者が、なぜ印刷工場を持たないファブレス化を行ったと考えられるか。 |
| 2 | 組組織体制 | 2代目経営者が、なぜA社での経験のなかった3代目にデザイン部門の統括を任せたと考えられるか。 | |
| 3 | 戦経営戦略(過去) | A社が現経営者である3代目が、印刷業から広告制作業へと事業ドメインを拡大させていったことで、同社にどのような利点と欠点をもたらしたと考えられるか。 | |
| 4 | 戦経営戦略(将来) | 2代目経営者は、プロジェクトごとに社内と外部の協力企業とが連携する形で事業を展開してきたが、3代目は、2代目が構築してきた外部企業との関係をいかに発展させていくことが求められるか。 | |
| 5 | 戦経営戦略(将来) | 新規事業であるデザイン部門を担う3代目が、印刷業を含めた全社の経営を引き継ぎ、これから事業を存続させていく上での長期的な課題とその解決策。 | |
| 2022年度 | 1 | 内内部分析 | A社が株式会社化(法人化)する以前における、同社の強みと弱み。 |
| 2 | 人人事施策 | A社が新規就農者を獲得し定着させるために必要な施策。 | |
| 3 | 戦経営戦略(将来) | A社が大手中食業者とどのような取引関係を築いていくべきか。 | |
| 4-1 | 組組織体制 | A社は今後の事業展開にあたり、どのような組織構造を構築すべきか。 | |
| 4-2 | 組組織体制 | 現経営者が、今後5年程度の期間で後継者を中心とした組織体制にすることを検討している際、どのように権限委譲や人員配置を行っていくべきか。 | |
| 2023年度 | 1 | 内内部分析 | 統合前のA社における強みと弱み(それぞれ30字以内)。 |
| 2 | 戦経営戦略(過去) | A社の現経営者が、先代経営者と比べてどのような戦略上の差別化を行ってきたか、かつその狙いは何か。 | |
| 3 | 人人事施策 | A社経営者が、経営統合に先立ってX社のどのような点に留意するべきか。 | |
| 4-1 | 組組織体制 | A社とX社の経営統合過程のマネジメントにおいて、どのように組織の統合を進めていくべきか。 | |
| 4-2 | 戦経営戦略(将来) | A社とX社の経営統合後、今後どのような事業を展開していくべきか(競争戦略や成長戦略の観点から)。 | |
| 2024年度 | 1 | 内内部分析 | A社の2000年当時における強みと弱み(それぞれ30字以内)。 |
| 2 | 組組織体制 | なぜ、A社は首都圏の市場を開拓するためにプロジェクトチームを組織したのか。また、長女(後の2代目)をプロジェクトリーダーに任命した狙いは何か。 | |
| 3 | 戦経営戦略(過去) | なぜ、Z社はA社に案件を持ちかけたのか。 | |
| 4-1 | 組組織体制 | 2024年の創業経営者の助言による配置転換の狙いは何か。 | |
| 4-2 | 人人事施策 | A社がZ社との取引関係を強化していくために必要な施策。 |
近年の「事例Ⅰ」には以下のような傾向が見られます。
出題テーマのバランス
かつては経営戦略に偏る年度もありましたが、近年は「内部分析」「人事施策」「組織体制」「経営戦略」がバランス良く問われる傾向にあります。 特に、第1問で企業の「強み・弱み」を問う内部分析問題が2022年度から3年連続で出題されており、この形式は今後も続く可能性が高いでしょう。SWOT分析の基礎となる内部環境分析の重要性がうかがえます。
組織体制の問題
組織体制は、毎年必ず出題される事例Ⅰの中核をなすテーマです。「事業部制組織」や「機能別組織」といった基本的な組織形態に加え、近年では「プロジェクトチーム」についても問われています。1次試験で学んだこれらの組織論に関する知識を、メリット・デメリットを含めて再確認しておくことが重要です。
人事施策に関する問題
人事施策も、近年は毎年出題される重要テーマです。解答の切り口として、「採用」「配置」「報酬」「評価」「能力開発(教育)」といった視点が有効です。これらの切り口から複数の解答パターンを準備しておくことで、応用的な設問にも対応しやすくなります。



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