【令和2年(2020年) 事例Ⅳ】第1問 経営比率分析 解説

事例Ⅳ

今回は令和2年(2020年)の第1問を取り上げ、どのような思考プロセスで解答に至るのかを具体的に解説します。(あくまでも、「私ならこのように解答する」という参考例として記載していますので、その旨ご承知おきください。)

問題の確認

令和2年(2020年)の問題はこちらに掲載されています。

問題文の確認

まずは、問題文から確認しましょう。(設問1)ではD社と同業他社の比較で、優れている」指標を「1つ劣っている」指標を「2つ挙げ、さらに「D社」の指標を計算し、「小数点第3位を四捨五入」して答えることが求められています。また、(設問2)では、財政状態と経営成績について「60字」で述べる必要があります。以下は問題文にマークした状態の例です。

財務諸表(B/S、P/L)のチェック

事例企業の貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)を確認します。

  • 問われているのは「D社」の数値なので、それを間違えないように○を書きます。
  • 当座資産に加えるべきものとして、「現金預金」「売上債権」のところに印をつけておきます。
  • B/Sの「流動資産」「固定資産」「流動負債」「固定負債」「純資産」の区切り線を引きます。
  • P/Lの各利益の下にアンダーラインを引きます。

以下はマークした状態の例です。

経営状態の傾向を把握

与件文を読む前に、まずは数値データから両社の経営状況の概観を掴み、仮説を立てます。この仮説が、後の与件文読解の「当たり」をつける精度を高めます。

収益性: 売上高はD社が4,555百万円、同業他社が3,468百万円とD社の方が多くなっています。それ以降は細かい数値は省略しますが、売上総利益D社の方が多く営業利益以降の利益はすべてD社の方が少なくなっています。

効率性: 売上高はD社の方が何割か多いですが、有形固定資産はD社が860百万円、同業他社が255百万円とD社の方が3倍以上多くなっていることがわかります。これにより、有形固定資産回転率はD社の方が劣っていると考えます。また、棚卸資産(販売用不動産)は両社ともほぼ同じなので、棚卸資産回転率はD社の方が優れていると考えます。

安全性: D社の当座資産(現金預金+売上債権)は707+36=743百万円に対し、流動負債(2,585)に対して大幅に不足しているため、当座比率は100%を大きく下回っています。同業他社の当座資産(現金預金+売上債権)は1,300百万円を超えており、流動負債1,069百万円で当座比率が100%を超えていることが明らかなので、当座比率はD社の方が劣っている指標と言えます。また、自己資本比率についても、D社の方が純資産が大幅に少ない一方で総資産はほぼ同じなので、自己資本比率もD社の方が劣っていると判断できます。

この段階で、以下のような解答の方向性が見えてきます。

  • 優れている指標: 「(総売上段階の)収益性」と「(棚卸資産の)効率性」に関する指標
  • 劣っている指標: 「(営業利益段階の)収益性」と「(有形固定資産の)効率性」そして、「安全性」に関する指標

この段階ではどの指標を採用するかはまだ確定できないので、次のステップに進みます。

与件文

立てた仮説が正しいかを確認するため、与件文を読み込みます。以下がその概要です。

D社は戸建住宅事業を主力とし、顧客志向のアフターケアを重視しています。一方で、飲食事業も展開しており、特にステーキ店やファミリーレストランは赤字に陥り、立て直しが課題となっています。

解答案

設問1について

以上の分析に基づき、設問1の指標を計算します。この時、設問2で記載する内容も念頭に置きながら指標を選択します。

  (a) (b)
売上高総利益率 26.39 (%)
有形固定資産回転率 5.30 (回)
当座比率 28.74 (%)

売上高総利益率

  • 売上高総利益率 = (売上総利益1,202÷売上高4,555)×100 ≒ 26.39 (%)
  • 選定理由顧客志向でアフターケアを重視しているため付加価値が高く、結果として売上総利益が高いという理由でこの指標を選出しました。

有形固定資産回転率

  • 有形固定資産回転率=売上高4,555 ÷ 有形固定資産860 ≒ 5.30 (回)
  • 選定理由: 飲食店事業で赤字状態になっている店舗があるため、店舗(=有形固定資産)の売上高に対する効率性が低いという理由でこの指標を選出しました。

当座比率

  • 当座比率= (現金預金707 + 売上債権36) ÷ 流動負債2,585 × 100 ≒ 28.74 (%)
  • 選定理由: B/Sの内容から、短期借入金が同業他社より多く短期安全性が低いと考えてこの指標を選出しました。

設問2について

最後に、これまでの分析結果を60字以内で要約します。設問1で挙げた「収益性」(優れている)・「効率性」「安全性」(劣っている)との3つの要素を、与件文の内容と絡めて簡潔にまとめます。

顧客志向の地域密着経営により収益性は高いが、赤字経営の飲食店により店舗の投資効率が低く、借入金依存により短期安全性が低い。

この解答では、設問1で挙げた指標の順番(収益性→効率性→安全性)に沿って記述しています。

以上となります。

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