今回は令和6年(2024年)の第1問を取り上げ、どのような思考プロセスで解答に至るのかを具体的に解説します。(あくまでも、「私ならこのように解答する」という参考例として記載していますので、その旨ご承知おきください。)
問題の確認
令和6年(2024年)の問題はこちらに掲載されています。
問題文の確認
まずは、問題文から確認しましょう。(設問1)ではD社と同業他社の比較で、「優れている」指標を「1つ」、「劣っている」指標を「2つ」挙げ、さらに「D社」の指標を計算し、「小数点第3位を四捨五入」して答えることが求められています。また、(設問2)では、「同業他社と比較した場合の特徴」について「80字」で述べる必要があります。「D社全体の状況」をまとめる設問要求ではないので間違えないようにしましょう。

財務諸表(B/S、P/L)のチェック
事例企業の貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)を確認します。
- 問われているのは「D社」の数値なので、それを間違えないように○を書きます。
- 当座資産に加えるべきものとして、「現金預金」「売上債権」のところに印をつけておきます。
- B/Sの「流動資産」「固定資産」「流動負債」「固定負債」「純資産」の区切り線を引きます。
- P/Lの各利益の下にアンダーラインを引きます。
以下はマークした状態の例です。


経営状態の傾向を把握
与件文を読む前に、まずは数値データからD社の経営状況の概観を掴み、仮説を立てます。この仮説が、後の与件文読解の「当たり」をつける精度を高めます。
収益性: 売上高はD社が約5,360百万円、同業他社が約11,151百万円とD社の方が同業他社の1/2以下になっています。売上総利益はD社が約3,163百万円、同業他社が約7,815百万円とD社の方が同業他社の1/2を大きく下回り、さらに営業利益も1/8程度となっています。以上より収益性はD社の方が劣っているようです。
効率性: D社の売上高は同業他社の1/2程度ですが、有形固定資産はD社が約476百万円、同業他社が約1,655百万円とD社の方が1/4程度となっていることがわかります。これにより、有形固定資産回転率はD社の方が優っています。一方、棚卸資産(商品・製品・原材料)についてはD社の方が同業他社の数倍になっているため、棚卸資産回転率はD社の方が劣っています。
安全性: 流動比率や当座比率は一般に100%を超えると安全性の面で問題ないと考えられていますが、今回の問題では流動比率・当座比率は両社ともに100%を超えています。一方、自己資本比率は明らかに、D社の方が劣っていると判断できます。
この段階で、以下のような解答の方向性が見えてきます。
- 優れている指標: 「(有形固定資産の)効率性」に関する指標
- 劣っている指標:「収益性」、「(棚卸資産の)効率性」「(自己資本比率の)安全性」に関する指標
この段階ではどの指標を採用するかはまだ確定できないので、次のステップに進みます。
与件文
立てた仮説が正しいかを確認するため、与件文を読み込みます。以下がその概要です。
D社はZ市を本拠地とする、飲食・惣菜・加工事業を展開する食品関連企業です。コロナ禍からの業績回復途上にあり、競争激化やコスト上昇、県外展開が課題となっています。製品開発から販売までの一貫体制を強みとする一方で、財務的リスクも認識しており、投資決定や業績評価の財務的見直しが求められています。
解答案
設問1について
与件文の内容を踏まえ以下のように指標を選択します。
| (a) | (b) | ||
| ① | 有形固定資産回転率 | 11.26 | (回) |
| ② | 売上高営業利益率 | 1.01 | (%) |
| ③ | 自己資本比率 | 14.15 | (%) |
有形固定資産回転率
- 有形固定資産回転率=売上高5,360 ÷ 有形固定資産476 ≒ 11.26(回)
- 選定理由: 設問2で与件文からの引用がしやすいため、有形固定資産回転率を選択します。
売上高営業利益率
- 売上高営業利益率 = (営業利益54÷売上高5,360)×100 ≒ 1.01(%)
- 選定理由:多面性を考慮して、収益性指標を選択します。また、差異が大きいため売上高総利益率よりも売上高営業利益率を選択します。
自己資本比率
- 自己資本比率=(純資産432 ÷ 総資産3,054)×100 ≒ 14.15(%)
- 選定理由: 多面性を考慮して、安全性指標を選択します。
設問2について
D社の特徴を80字でまとめます。設問1で分析した強み(効率性)と弱み(収益性・安全性)を簡潔に記述します。
D社は、自社工場を活用した焼き鳥などが好評で、有形固定資産の投資効率が高いが、飲食店事業の業績低迷により収益性が低く、借入金依存により安全性が低い点が劣っている。
以上となります。


コメント