費用曲線
まず、ある生産品の生産量と費用の関係を表したグラフを示します。ここには、数量が変化しても一定の費用で変化しない費用を示す固定費用曲線(例:工場労働者の人件費)、数量に応じて変化する費用を示す可変費用曲線(例:原材料)、これらを合算した総費用曲線があらわされています。総費用曲線は、生産量が増加するにつれて最初は急激に上昇し、その後、なだらかになり、さらに最後の段階で再び急激に上昇する形状をしています。

- 生産数量がまだ少ない段階では生産設備の調整や作業員の手配など、非効率な状態が生じるため費用が多くかかる
- 徐々に生産量が増えることで、量産効果により効率が改善し、生産費用も抑制されるようになる。
- さらに生産数量を増やすと、今度は設備のメンテナンスや作業員増員などで再び費用が多くかかるようになる。
総費用曲線と平均費用曲線(AC)
原点から総費用曲線に対して直線を引き、その交点を見つけた場合、この直線の傾きはその生産量における平均費用を示します。(これは、傾きが「総費用 ÷ 生産量 = 平均費用」という関係式で表されることから説明できます。)
この平均費用を連続的にグラフ化することで、「平均費用曲線(AC)」を作成することができます。平均費用曲線は通常、下に凸の形状を描きます。さらに、曲線の最低点は、原点から引いた直線と、総費用曲線との接点に該当します。

総可変費用曲線と平均可変費用曲線(AVC)
前出の考え方を可変費用に当てはめることもできます。この場合、直線は原点ではなく総費用曲線と縦軸の交点(固定費部)から引かれ、これらを連続的に結んだグラフを「平均可変費用曲線(AVC)」と言います。

総費用曲線と限界費用
次に、総費用曲線の接線について考えます。総費用曲線の各点における接線の傾きは「限界費用」と呼ばれ、生産物を1単位追加で生産する際にかかる費用を示します。この限界費用も、連続的にグラフ化することが可能であり、これを「限界費用曲線(MC)」と呼びます。
また、先ほど平均費用曲線(AC)や平均可変費用曲線(AVC)の最低点は、縦軸から総費用曲線へ引いた接線と等しくなると述べました。図中の点a、点bがその点に該当しますが、この点では「限界費用」が「平均費用」(または「平均可変費用」)と等しくなることがわかります。(この点は非常に重要で後述する損益分岐点、操業停止点に関連してきます。)
※私はこの考え方を理解するのが苦手だったのですが、例えば以下のように考えると良いのではないかと思います。
新たに生産した1単位がこれまでの平均費用と同じコストで生産されているため、平均費用は上下どちらにも変化しない。
また、仮にこれ以上生産すると、新たに生産した1単位が平均費用を引き上げるため、全体の平均費用は増加することになる。

平均費用曲線、限界費用曲線と損益分岐点、操業停止点
平均費用曲線(AC)、平均可変費用曲線(AVC)、および限界費用曲線(MC)を一つのグラフで表すと以下のようになります。またこのグラフは、縦軸に「価格」と追記したとおり、これらの費用をもとに価格を決めた場合に利益がでるかどうか、という分析にも活用することができます。
まず、注目すべきは平均費用曲線(AC)と限界費用曲線(MC)の交点であり「損益分岐点」と呼ばます。販売価格をP1とした場合には、固定費と変動費をちょうど賄える価格であることを示しています。
損益分岐点を下回ると利潤はマイナスになりますが、固定費をまだ賄えている場合には、生産を継続するほうが操業停止よりも有利だといえます。一方で、販売価格がP2を下回ると、変動費も賄えなくなり、この場合は操業を停止するほうが適切です。この点は「操業停止点」と呼ばれます。
