貿易理論における需要曲線、供給曲線

経済学・経済政策

関税がない場合

ある商品の市場価格を縦軸、需要量および供給量を横軸にとった場合、需要と供給の関係は右下がりの需要曲線と右上がりの供給曲線で表されます。
均衡点(均衡価格)と需要曲線との間の面積は「消費者余剰」、均衡価格と供給曲線との間の面積は「生産者余剰」と呼ばれます。これらの面積が大きいほど、それぞれの余剰が大きいことを意味します。

仮に、その商品が海外からの輸入によって市場価格が均衡点より低下した場合、消費者余剰は増加します。一方で、国内の生産量が減少するため、生産者余剰は減少することになりますが、『総余剰(消費者余剰+生産者余剰)が増加するため社会全体としては得をする』とも言えます。

関税がある場合

この時、海外からの輸入品に関税を課すと市場価格が上昇し、その分だけ消費者余剰は減少します。一方、価格上昇に伴い国内生産量は増加し、生産者余剰は回復します。また、関税額(1単位あたりの関税×輸入量)で囲まれた面積は税収、つまり「政府の余剰」となります。

しかしながら、

社会全体の総余剰「生産者余剰」の増加分+「政府余剰」の増加分「消費者余剰」の減少分

は、関税導入前と比べて必ず減少します。そして、この損失を「死荷重(2つの三角形部分)」と呼びます。現在の米国における関税政策も、まさにこうした影響をもたらしているといえます。