法的整理による倒産手続き

一次試験

会社の倒産手続きについては、法的整理と任意整理に分けられます。さらに法的整理は「再建型」と「清算型」の2種類に大別されます。

再建型

民事再生

株式会社に限らず、個人やあらゆる法人格で利用可能な手続きです。 原則として経営陣は退陣せず、引き続き経営を行います(DIP:Debtor In Possession / 債務者主導型)。再生計画を成立させるには、以下の両方の条件を満たす債権者の同意が必要です。

  1. 議決権を持つ債権者の過半数の同意
  2. 議決権総額2分の1以上の同意

担保権(抵当権など)は原則として手続きに縛られず行使可能ですが、事業継続に不可欠な資産(例:工場)が失われるのを防ぐため、裁判所が担保権実行の中止命令を出すことなどがあります。

会社更生

株式会社のみが利用できる再建手続きです。 原則として経営陣は退陣し、裁判所が選任した更生管財人が経営権を握ります。ただし、近年では一定の条件下で経営陣が残る「DIP型会社更生」も認められています。 民事再生と異なり、担保権を含むすべての債権が手続きによって制限され、個別の権利行使は禁止されます。

清算型

破産

会社の財産をすべて金銭に換え、債権者に公平に分配(配当)して会社を消滅させる手続きです。裁判所が選任した破産管財人が財産の管理・換価・配当を行います。

【債権の優先順位】

配当の前に、まず以下の権利が扱われます。

  • 相殺権: 会社に対して債権と債務の両方を持つ者が、それらを対当額で消滅させる権利。
  • 別除権: 担保権を持つ債権者が、担保物件から他の債権者に優先して弁済を受ける権利。

上記の権利行使後、会社の総財産(破産財団)から、以下の順で弁済が行われます。

  1. 財団債権(最優先で弁済) 破産手続きによらず随時弁済される債権。 (例:破産管財人の報酬、手続き費用、一部の税金、3ヶ月分の未払い給与など)
  2. 破産債権(優先順位に従い配当) 残った財産から、以下の順で配当されます。
    • ① 優先的破産債権: 財団債権以外の税金や労働債権など。
    • ② 一般破産債権: 一般の買掛金や借入金など。
    • ③ 劣後的破産債権: 破産手続開始後の利息など。
    • ④ 約定劣後的破産債権: 予め債権者との間で劣後する合意があった債権。

特別清算

解散した株式会社について、債務超過の疑いがある場合などに用いられる清算手続きです。 破産に比べて手続きが簡易で費用も安く済みますが、債権者総数の3分の2以上の同意が必要であり、債権者の協力が得られやすい状況で利用されます。