在庫管理とは、必要な資材を安定的に供給できるよう、在庫を最適な水準に維持することです。
ABC分析
しかし、数多くある資材の在庫管理をすべて同じように行うのは、費用対効果の面で効率的ではありません。そこで、在庫金額などの指標を用いて品目を価値ごとにランク付けし、管理に濃淡をつける手法が有効です。その代表的な手法がABC分析です。
例えば、重要度の高い順に品目を並べ、累計構成比で上位70%までを「Aグループ」、70~90%までを「Bグループ」、それ以降を「Cグループ」のようにランク分けします。そして、Aグループは重点的に管理し、B、Cグループは管理を簡素化するなど、グループごとに適した管理を行うことが可能です。
このように優先順位を明確にすることで、各グループに適した発注方式の選定も可能になります。

定期発注方式
定期発注方式とは、毎週月曜日や毎月1日など、あらかじめ定めた発注サイクルで定期的に在庫量を確認し、発注する方式です。発注量は都度変動します。
この方式は、在庫を厳密に管理できるため、ABC分析におけるAグループなどの重点管理品目や、需要の変動が大きい品目、あるいは単価の高い品目に適しています。定期発注方式の主なメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット:
- 需要変動への対応がしやすく、在庫の厳密な管理が可能です。
- 発注時期が固定されるため、業務計画を立てやすくなります。
デメリット:
- 在庫の確認や発注に手間がかかり、管理コストが増加する傾向があります。
- 急な需要増に対応するため、在庫水準が高め(安全在庫を多く持つ必要)になりがちです。

(補足)安全在庫について
なお、文章中にある「安全在庫」とは、需要の変動や納期の遅れといった不測の事態による在庫切れ(欠品)を防ぐために、通常消費する在庫とは別に最低限確保しておくべき在庫のことです。原則として、この在庫量を下回らないように管理します。
定量発注方式
定量発注方式とは、在庫があらかじめ定めた水準(発注点)を下回ったタイミングで、常に一定の量を発注する方式です。発注点は常に監視しますが、発注する時期は不定期になります。
この方式は、発注管理の手間を省けるため、ABC分析におけるB、Cグループなどの管理の優先度が低い品目や、比較的安価で需要が安定している品目に適しています。
定量発注方式の主なメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット:
- 発注点を下回ったかどうかを確認するだけなので、運用が簡単です。
- 発注プロセスがシンプルなため、システムによる自動発注と相性が良いです。
デメリット:
- 需要の急増や季節変動など、消費量が大きく変わる品目には対応しにくく、在庫切れや過剰在庫を招くリスクがあります。

その他の発注方式
ここまで紹介した方式の他にも、いくつかの発注方式があります。ここでは代表的な2つの方式を紹介します。
1. 定期補充発注方式
「補充点発注方式」とも呼ばれます。あらかじめ定めた「最大在庫量」を基準に、定期的に在庫を確認し、その上限まで在庫を補充するよう発注する方式です。需要の変動に対応しつつ、在庫が過剰になるのを防ぐことができます。在庫切れを避けたい重要品目などに用いられます。
2. ダブルビン方式(2ビン方式)
定量発注方式を簡易的に運用する手法の一つです。在庫を2つの箱(ビン)に分けて保管し、現在使用している1つ目の箱が空になったら、それを合図に発注をかけます。発注した在庫が届くまでは、2つ目の箱の在庫を使用します。発注点を物理的に可視化できるため、管理が非常に簡単になるのが特長です。
