標準時間

一次試験

標準時間とは、その仕事に習熟した作業員が、定められた作業条件下で、無理のないペースで仕事を行うために必要とされる時間のことです。これには必要な「余裕」も含まれます。

標準時間の構成

標準時間は、複数の視点から分解できます。まず、作業の目的別に「準備段取り時間」「主体作業時間」に分けられます。

  • 準備段取り時間: 生産ロットを開始する前に行う準備や、終了後に行う片付けなどにかかる時間です。ロットの大きさに依らず、一度の生産に対して固定的に発生します。
  • 主体作業時間: 製品を一つひとつ加工・組立するなど、作業の主目的を達成するためにかかる時間です。生産数量に比例して発生します。

さらに、これらの時間はそれぞれ、作業の価値的側面から「正味時間」「余裕時間」で構成されています。

  • 正味時間: 作業を直接遂行するために、純粋に必要となる時間。
  • 余裕時間: 疲労回復、準備、片付けなど、作業に付随して必要となる時間。関係性は以下のようになります。

これらの関係をまとめると、以下のようになります。

また、余裕時間は、作業内容や環境に応じてさらに細かく分類されます。

レイティング係数

作業時間を実際に計測する際、作業者の習熟度やペースには個人差があります。この個人差を補正し、標準的な作業ペースに換算するための係数がレイティング係数です。

標準的なペースを100%としたとき、観測した作業ペースがどの程度かを評価します。

\(\text{レイティング係数} = \frac{\text{基準とする作業時間}}{\text{観測した作業時間}}×100\)
  • 習熟度が高く、ペースが速い作業者: レイティング係数は100を超えます(例: 110%、120%)。
  • ペースが遅い作業者: レイティング係数は100を下回ります(例: 90%)。

この係数を使って、以下のように正味時間を計算します。

\(\text{正味時間} = {\text{観測した作業時間×レイティング係数/100}}\)

余裕時間と余裕率

余余裕時間は、余裕率を用いて設定するのが一般的です。余裕率は、作業時間に対してどの程度の余裕を見込むかを示す割合で、主に2つの計算方法があります。

外掛け法

正味時間を基準(分母)として余裕率を計算する方法です。

\(\text{余裕率} = \frac{\text{余裕時間}}{\text{正味時間}}×100\)

【例】正味時間 80分、余裕時間20分の場合、20÷80で、余裕率は25%になります。

内掛け法

標準時間(正味時間+余裕時間)を基準(分母)として余裕率を計算する方法です。

\(\text{余裕率} = \frac{\text{余裕時間}}{\text{正味時間+余裕時間}}×100\)

【例】正味時間 100分、余裕時間20分の場合、余裕率は20÷(80+20)で、20%になります。