原価計算の種類
原価計算には総合原価計算、個別原価計算、標準原価計算があります。
- 総合原価計算
- 大量生産される製品の原価を計算する方法。製造工程全体の総原価を生産量で割り、一製品あたりの平均原価を算出します。目的は、大量生産品のコスト管理や利益計算を効率的に行うことです。
- 標準原価計算
- あらかじめ設定した標準原価を基準に、実際原価との差異を分析する方法。目的は、原価のコントロールや無駄の削減、経営の効率化を図ることです
- 個別原価計算
- オーダーメイド製品やプロジェクトごとの原価を計算する方法。案件ごとに直接費用を集計して算出します。目的は、特定の受注やプロジェクトの収益性を正確に把握することです。
今回はこの中から「個別原価計算」についてみていきます。
個別原価計算
個別原価計算は、製品ごとの原価を計算する方法であり、特に間接費を配賦する考え方を理解することが重要です。直接材料費や直接加工費などは、どの製品にどれだけの原価が使われたかを明確に把握できます。一方で、光熱費や消耗品費など、複数の製品に共通して発生する間接費については、どの製品にどの程度割り当てるべきかが課題となります。
この課題を解決するため、ある程度の合理的な基準に基づいて便宜的に割り当てを行います。この基準を配賦基準と呼びます。
個別原価計算の理解を深めるためには、実際の問題に取り組むのが良いと思います。
例題(平成24年度 第7問)
平成24年度 第7問を見ていきます。

以下のように解いていきます。
当月の売上原価として計上されるのは、「完成・引渡」となっている#121、#122の費用になります。
直接費の計上
- #121: 前月繰越(5,600千円)と直接労務費(300千円)。
- #122: 直接材料費(3,200千円)と直接労務費(2,100千円)。
これらはそれぞれ直接費として計上されます。
間接費の計算
製造間接費については、以下の(注)を基に配賦率を計算します。
(注) 製造間接費は機械運転時間に基づいて予定配賦している。本年度の製造間接
費予算額は 48,000 千円(予定機械運転時間 24,000 時間)である。
これにより、製造間接費の配賦率は、48,000千円÷24,000時間=2千円/時間であることが計算できます。
あとは、#121と#122の機械運転時間の合計と配賦率をかけて計算します。
- 間接費=2千円/時間 × (100+900)時間=2,000千円
売上原価の算出
直接費と間接費を合計し、売上原価を計算します。
- 売上原価=5,600千円+300千円+3,200千円+2,100千円+2,000千円=13,200千円
以上より、答えは「イ」となります。