剰余金配当時の準備金積立

財務・会計

会社法による制約

配当を行う場合、会社法では以下のように決められています

  • 剰余金の配当に際して、それにより減少する剰余金の額の1/10を、資本準備金または利益準備金として積み立てる
  • 資本準備金と利益準備金の合計額が、資本金の1/4になるまで積み立てる

用語の解説

  • 利益剰余金: 企業が過去に稼いだ利益のうち、配当に回されなかった剰余金を指します。
  • 資本剰余金: 資本取引(例: 株式の発行)によって発生した剰余金で、資本金に組み入れられなかった部分を指します。

利益剰余金を原資とした場合は利益準備金へ、資本剰余金を原資とした場合は資本準備金へ積み立てます。

覚え方の工夫

この部分はよく忘れてしまうので、私は以下の語呂合わせで覚えていました。

配当(10)の 1/10 を資(4)本金の 1/4 まで積み立てる

なお、こちらは弥生カレッジCMCさんの「無料ではじめる日商簿記2級」[商業編]09純資産のレジュメ(5ページ目)で覚えた語呂合わせです。この件に限らず「日商簿記2級」と「中小企業診断士の財務会計」の共通点は多いため、準備期間が1年以上あるなど余裕のある方は一緒に学習してみるのもおすすめです。(今年度の中小企業診断士試験のために、日商簿記2級を学習するのは非効率なのでおすすめしません。あくまでも来年度の受験を目指す方など時間的に余裕がある方にのみおすすめします。)

例題(令和2年度 第4問)

令和2年度 第4問を見ていきます。

以下のように解いていきます。

まず、設問で「繰越利益剰余金を原資」と書いていますので、積み立てるのは「利益準備金」であることがわかります。(ここで「ウ」か「エ」に絞られます。)

配当(10)の 1/10 を資(4)本金の 1/4 まで積み立てる

の語呂合わせから、さらに計算を進めます。

配当額の1/10を計算
配当額6,000千円に対し、1/10は以下の通りです。

\(6,000 × \frac{1}{10} = 600千円\)

→ 利益準備金として積み立てるべき基本額は 600千円 です。

資本金の1/4の確認
法定準備金(資本準備金と利益準備金の合計)は、資本金の1/4を上限とする必要があります。

\(18,000 × \frac{1}{4} = 4,500千円\)

配当前の準備金合計は以下の通りです。

\(1,000(資本準備金) + 3,000(利益準備金) = 4,500千円\)

→ 積み立て可能な余地は 4,500−4,000=500 千円となります。

積み立て額の決定
配当額の1/10(600千円)と資本金の1/4を超えない範囲(500千円)の 小さい方 を採用します。
→ 積み立て額は 500千円 となります。

以上より、正解は「」となります