経営指標分析とは
経営比率分析は、2次試験の事例Ⅳで必ず問われる重要な分野です。2次試験では、貸借対照表や損益計算書といった財務諸表をもとに、以下のような切り口で分析を進めていきます。
- 安全性
- 収益性
- 効率性(活動性)
1次試験では上記の切り口の中から具体的な指標について実際に計算することが求められることがあります。基本的にはそれほど難しい計算は求められませんが、記憶があいまいだと焦りが生じてしまい、計算機を使わずに手計算した際にケアレスミスをしてしまう可能性があります。その結果、思った以上に時間がかかってしまう場合もあるため注意が必要です。
今回はこれらの切り口の中から「安全性」に焦点を当てて解説します。
短期的な安全性を表す指標
安全性は、貸借対照表の情報をもとに、資金調達の安定性や負債の返済能力などを評価し、企業が財務的に安定して継続的な経営を維持できるかを判断するための指標です。まず、短期的な安全性を表す指標として以下のようなものがあげられます。
- 流動比率(%) = (流動資産÷流動負債)×100
- 当座比率(%) = (当座資産÷流動負債)×100
特に「流動資産」と「当座資産」の違いを抑えるのが重要です。
「当座資産」とは流動資産に含まれる現金化しやすい資産のことで、「現金」や「売上債権」などがあげられます。一方で「流動資産」には含まれるものの当座資産に含まれないものとして、「棚卸資産」があげられます。この「棚卸資産」は販売を通じて初めて現金化されるため、すぐに現金化できる資産とは言えません。
このように、流動資産と当座資産の違いをしっかり押さえておくことが、安全性分析を正確に理解するための鍵となります。
長期的な安全性を表す指標
次に、長期的な安全性を示す指標を見ていきます。試験では、長期安全性指標に関して紛らわしい問題が出題されることがあるため、意味と計算式をしっかり覚えておくことが重要です。また、大きい値ほど良い状態を示す指標と、小さい値ほど良い状態を示す指標があるため、それぞれを区別して理解しておく必要があります。
- 自己資本比率(%) = (自己資本÷総資産)×100 :大きい値ほど良い
- 負債比率(%) = (負債÷自己資本)×100 :小さい値ほど良い
「自己資本比率」は自己資本と総資産の比率であり、名前、計算式、意味が直感的に理解しやすい指標です。自己資本が多くなるほど値が大きくなるため、大きい値ほど良い状態を示す指標となります。
一方、「負債比率」は、他人資本である負債と自己資本の比率を示します。自己資本比率が「自己資本」と「総資産」の比率であるのに対し、負債比率は「負債」と「自己資本」の比率であるため、両者を混同しないように注意が必要です。また、負債比率は負債が少なくなるほど値が小さくなるため、小さい値ほど良い状態を示す指標となります。
次に、固定資産や固定負債に関する指標を見ていきます。
- 固定比率(%) = (固定資産÷自己資本)×100 :小さい値ほど良い
- 固定長期適合率(%)={固定資産÷(固定負債+自己資本)}×100 :小さい値ほど良い
「固定比率」は、名前が類似している「流動比率」と比較すると、分母が「流動負債」ではなく「自己資本」であるため、混乱しやすい指標です。
一方、「固定長期適合率」は、分母が固定負債と自己資本の合計となっており、さらに覚えにくい指標といえます。
これらの指標はどちらも小さい値ほど良い状態を示すため、この点にも注意が必要です。特に、分子が「固定資産」であることから、一見すると「大きい方が良い」と勘違いしやすく、試験ではひっかけ問題として出題されることがあります。
この「小さい値ほど良い状態」を表す意味については、以下のような背景を覚えておくとよいと思います。
建物や機械設備などの高価な固定資産は、長期的な投資効果を得るためのものであり、流動負債のように短期間で返済しなければならない資金で賄うべきではありません。したがって、固定資産は長期返済が可能な固定負債や、返済義務のない自己資本によって調達した資金で投資することが望ましいとされています。この点を測るための指標が「固定比率」や「固定長期適合率」です。
さらに、これらの指標は貸借対照表の構造に深く関連しています。つまり、固定長期適合率は流動比率の裏返しと言えるため、この指標が100%を超えた場合は安全性が悪化していると考えられます。
