前回の内容で扱った予算制約線と無差別曲線による効用最大化を基に、今回はある財の価格が低下した場合について詳しく考えます。たとえば、Y財の価格が一定のまま、X財の価格が低下したと仮定すると、同じ予算内でX財をより多く購入できるようになります。この変化により、予算制約線の傾きは緩やかになります。その結果、効用最大化点はaからa’へと移動します。

代替効果
ここで、新しい予算制約線を元の無差別曲線に接する点まで平行移動させます。そして、元の予算制約線との接点(a)と、平行移動した予算制約線との接点(a”)に注目します。このaからa”への移動に伴うX財の消費量の増加は、「代替効果」と呼ばれるものです。この「代替効果」による消費量の増加は、価格が低下すればどのような財でも基本的に発生します。(価格が低下すれば入手しやすくなるので、普通に考えると消費量は増えますよね。)

所得効果(下級財)
次に、代替効果による点a”と、新しい予算制約線上の点a’との関係を考えます。このケースでは、X財の消費量が若干減少し、代替効果による増加分を相殺するような方向に効果が表れています。この効果を「所得効果」と呼びます。これは、X財の価格低下により実質所得が増加した結果として現れるものです。
なお、この「所得効果」は常に代替効果を打ち消す方向に働くとは限りません。この例のように「所得効果」が「代替効果」による増加分を打ち消す方向に働く場合、X財は「下級財」であると言います。下級財は所得が増えると消費が減少するもののことで比較的安価な日用品が該当します。(たとえば、所得が増えたら、普段食べ飽きているカップラーメンやお菓子ではなく、より贅沢な商品を購入したくなることを想像してみてください。)

上級財
次に、別のケースとして上級財について見ていきます。上級財とは、所得が増えるほど消費量が増加する財を指します。図をご覧いただくとわかるように、「代替効果」による消費量の増加に加え、「所得効果」によってさらに消費量が増加する方向に働きます。たとえば、すき焼きを例にすると、「牛肉」が上級財に該当し、「野菜」は下級財とされることがあります。(ただ、最近は野菜も値上がりしていますので、当てはまらなくなっているかもしれませんね。)

ギッフェン財
最後に、ギッフェン財について説明します。ギッフェン財は、所得が増えることによって「代替効果」による消費量の増加が打ち消されるだけでなく、最終的には元の消費量よりも減少してしまう財を指します。図を見ていただくと、この特徴がよくわかると思います。中小企業診断士試験では頻出のテーマなので、しっかり覚えておく必要がありますが、実際の社会ではほとんど見られない現象だと言われています。(たとえば、ジャガイモがギッフェン財として挙げられることがありますが、個人的にはあまりしっくりこないため、図で理解しておくのが効率的だと思います。)
